2022.12.01

新しい基準 - ECE22-06ヘルメットのホモロゲーションの仕組み

・旧規格のECE22-05が20年ぶりに新たな規格ECE22-06へ更新されました。
・ECE22-06は2021年1月1日に施行されましたが、ECE22-05のヘルメットは引き続き使用することができます。
・新しい規格では、衝撃試験の対象箇所と規定される速度域が拡大されました。
・新たにバイザーの耐貫通性試験が実施されます。
・FIMレース規格と同様に、回転を伴う衝撃に対する保護性能を評価します。

2021年1月1日から、ヨーロッパとそれを採用するすべての国で、新しいオートバイ用ヘルメットのホモロゲーション規格が施行されました。

ECE22-05が施行されていた19年間を経て、ECE22-06は規格を更新し、市場で販売するヘルメットに求められる安全性のレベルを引き上げたものです。

新ECE22-06の適用時期と適用対象

ECE22-05規格は、現在でも有効な規格です。

しかし、2023年6月まで猶予期間が設けられており、それを過ぎると販売が認められないようになります。

なお、ECE22-05規格のヘルメットについては、規格上の制限はない為、2023年7月以降も、ユーザーは公道で使用することができます。

衝撃試験のポイント

新規格ECE22-06では、より厳格で正確な一連のテストで、より高い保護レベルを要求しています。

旧規格のECE22-05では、ヘルメットのシェルにある5つのポイント(フロント、トップ、バック、サイド、チンガード)が、アンビル(鋼鉄製の部品が設置された装置)に対する衝撃を受けるポイントとして評価に使用されていました。

ECE22-06では、ヘルメットごとに合計18項目のテストを行い、フルフェイスモデルの場合はそのうちの1項目がチンガードのテストとなります。

つまり、メーカーは評価されるポイントが効果的な保護機能を備えていることを保証する必要があります。また、ヘルメットに衝突する物体の形状(平らなもの、段差や棒状のもの)によっても異なります。

次に、6mmの鋼球を秒速80mでバイザーに向けて発射するというバイザーの耐貫通性試験が行われます。

バイザーは鉄球の通過を防ぎ、割れた場合でも粉々にならないようにする必要があります。

衝撃速度の違い

当たり前のことですが、ヘルメットは激しい衝撃だけでなく、速いスピードやそれほど激しくない打撃に対しても保護性能を発揮する必要があります。

ここではいくつかの概念をはっきりさせておくとよいでしょう。

特に剛性の高いヘルメットは、高速での衝撃に対して高い保護性能を発揮すると思われています。

しかし、中低速の衝撃に対しては、安全性が低下する可能性があります。

なぜなら、構造的な剛性が高すぎると、衝撃を十分に吸収・発散できずに、その力がすべて頭部に伝わってしまう可能性があるからです。

つまり、低速から高速まで適切な保護性能を保証できる新しいヘルメットを提供するには、さらなる開発が必要ということです。

ECE22-05では、7.5m/s(時速28km相当)という1つの速度での衝撃を想定しているに過ぎません。

ECE22-06では、より包括的で正確な試験のために、6、7.5、8.2m/sで評価されます。

視野の広さ

フロントオープニングとバイザーが提供する視界の広さが評価の対象となる為、視界の広さが所定の閾値を下回ってはいけません。

なお、新しいホモロゲーションで実施される、視覚的歪み、耐傷性、光の屈折レベルに関するテストは、バイザーだけでなく、サンバイザーにも要求されています。

回転加速度とは?

さらに新しい評価ポイントとして、斜め方向からの衝撃があります。

つまり、頭部が垂直ではない角度で何らかの物体に衝突する際のすべての衝撃を指します。最新の業界研究によると、頭部に伝わる強い回転(回転加速度)により、最も深刻な脳損傷を引き起こすのはまさにこの衝撃だとされています。

このような衝撃は、加速度センサーや角速度センサーを用いた、従来よりも高度な測定システムによって調べることができるようになりました。

モジュール式ヘルメットとP/Jホモロゲーション

P/Jホモロゲーションは、モジュラーヘルメットに関するものです。Pはフルフェイスヘルメットを示す「プロテクティブ」、Jは「ジェット」(オープンフェイス)の頭文字をとったものです。

この頭文字をとって、P/Jホモロゲーションを取得したヘルメットは、オープンでもクローズでも使用できることを意味しています。

ECE22-06では、この規格を満たすための試験についてもより精密に規定されています。

P/Jのホモロゲーションを取得するためには、フルフェイスヘルメットとオープンフェイスヘルメットのそれぞれのテストを受けたときに、ヘルメットが閉じたままでも開いたままでも安全性が確保できていることが必要です。

もちろん、両方のテストに合格しなければ、規格に適合しないことは言うまでもありません。

統合通信システム、その他付属品

新しい規格によると、ヘルメットの通信システムやその他の付属品は、外付けであれシェル内に組み込まれているものであれ、ヘルメットと同じ規格にクリアする必要があります。

つまり、適用されるヘルメットのモデルとともに検証されていないインターコムシステムは、もはや使用を許されないということです。

ECE22-06が唯一のホモロゲーションである場合、通信システムやその他のアフターマーケットアクセサリーを取り付けるには、ヘルメットが規定しているアクセサリーのリストに基づいて、ヘルメットメーカーが認可しなければなりません。

新しいECE22-06規格は、20年近く前の規格から確実に進歩しています。より正確で多様な試験をより厳格に行い、すべてのライダーに提供される安全性のレベルを高めています。

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