ニコ・チェレジーニ:情熱の香り
(寄稿原文:Nico Cereghini "You experience a bike travel with all your senses")
モーターサイクルに乗った後に、どんな匂いを感じることができるでしょう?
この話題は、気楽なものだとに感じられるかもしれません。しかしこれからお読み頂くとおり、匂いとはバイクに関連したものであり、またテクニカルな面もあります。
モーターサイクルに乗っているときだけ、鮮明に感じることができる香りや匂い、寒さや暖かさ、熱い風があるのです。
もちろん、これは外を歩いている時にも感じられるのですが、モーターサイクルに乗って、スピードがあれば、そのチャンスはさらに広がります。匂いや暖かさは常に変化し、ゆえにシンプルな乗り物が充実した旅になるのです。
まずはバッドスメル、悪臭から話を始めましょう。 危険で、スリップする可能性もあるもの。それはガソリンのにおいです。
ここでテクニカルな面が登場します。あなたの鼻がしっかりとおっていれば、もしかしたらスリップ、落車を回避することができるかもしれません。
アスファルトの上のトラップ。ストレートやターンの連続の途中にある、ほんの少量のガソリン。 大型トラックや農作業車が主な「スプレッダー」です。
アスファルトの上でブーツの底をスライドさせ、濡れていて滑りやすいかどうかを確認し、必要に応じてモーターサイクルを立ててバンクさせないようにします。
幸いなことに、良い香りもあります。私のお気に入りは、サルデーニャのエルバ島や、自然が残る海岸沿いの夏の香りです。
それはオリエンタルなスパイスの香りです。ヘリクリサム(Helichrysum)という、地中海性の森林によくある黄色い小さな花からきていると習ったことがあります。
特に夏の乾燥した季節になると、この小さな植物は強い香りを放ち、鼻に長くとどまります。もしかしたらあなたも知っているかもしれません。
夏場の刈りたての干し草の匂いと、それにかかわる匂いも楽しんでいます。
私が毎年行くプステリア峡谷では、最初の草刈りは6月の初め、2回目は7月末、3回目は9月に行われます。
もちろん、南チロルの農家はしっかりと肥料を与えなければなりませんし、牛がたくさんいるので、そのような匂いもあります。モーターサイクルで走ると、干し草の匂いから肥やしの匂いに変わりますが、正直、あまり気になりません。とても自然な感じです。
旅の香りは、他にもたくさんあります。
雨の匂いや、嵐の後に太陽の下で乾いていく濡れたアスファルトの匂い、太陽に照らされた海岸の塩の匂い、北の森の苔や刈りたての木の匂い、収穫の匂い、ラベンダーの匂い、プロヴァンスでは何キロにもわたってあなたを包み込んでくれる匂い、モロッコやチュニジアではスパイスや染料の匂いを思い出すのです。